これは……不思議な洞窟ね。

あの館の地下にこんな洞窟が あったなんて……。

ここはイシュグリアだ。 この程度で驚いてられるか。

それにグランガイアにだって 奇妙な場所はいくらでもあっただろうが。

パリス、気にしないで。

こいつには素直に感動するって感情が 欠如しちゃってるから。

ええ、私も残念な人の相手に 少しずつ慣れてきたわ。

お前ら慣れ過ぎだ……。 いつかぶっ潰してやるからな……。

クソッ、その話は後だ！

おそらくメロードとかいう魔神は この先にいる。

外から見た限りだと、小さな城っぽい 建物に繋がってたようだから

そこに何かがあるんだろうよ。

まずはとっととここを抜けるぞ。

セリア、この結晶を見て。 綺麗だけどどこか妖しい光……。

本当ね。 普通の宝石とかとも違うようだし……。

その結晶には触れ過ぎないことだな。

誰だ！

…………。

テメーは……。

オーンのジジイはどうした？

フン、お前たちも理解しているのだろう？

オーンの相手をまともにするなど 正気の沙汰ではないということを。

ヤツなら今頃、俺を探して中位魔神や 魔獣を相手に暴れまわってる頃だろうよ。

まあそれでヤツを殺せるとは思わないが 少しは弱らせることができる。

俺が復讐を果たすのはその先だ。

どうして私たちにそんな話を？

私たちはオーン様と同じアクラス召喚院の 召喚師なのは知っているのでしょう？

俺が恨みを持つのはオーンやグラデンスたち 召喚院の中枢の者だけだ。

お前たちのような末端の駒には むしろ憐れみを持っているくらいだよ。

で、私たちを可哀想に思っているあなたは どうしてここに現れたの？

貴様たちがオーンの手先だと 思っていたのだが、

雷光橋での様子を見ていると、どうやら お前たちもヤツの被害者のようだからな。

メロードとの戦いの際に邪魔をしたこと、 それだけは詫びておこうと思っただけだ。

…………。

その小汚い外見と違って、 随分と律儀なようだな。

…………。

いつの時代にもお前のような 召喚師はいるものだな。

チッ……。

まあいい、話を戻すがこの結晶は どう危険なんだ？

この結晶には魔神の力が無い者にその力を わずかずつながら与える効果がある。

魔神の力を与えるですって！？ それって大変な効果じゃない！

なぜ魔神たちはそんな場所を 放っておいているの？

イシュグリアに棲む者にとって

その力は生まれた時から持っている者が ほとんどだからな。

だから、ここに価値を見出すのは 外から来た者だけだ。

俺やメロードのようにな。

…………。

人を捨てる力を欲していないなら これ以上ここに長居はしないことだ。

俺のような姿になりたいというなら 止めはしないがな。

それは遠慮したいわね……。

フン、正直だな。

それと、これが最後の助言だ。

俺がオーンたちを殺す邪魔をするな。

もし嫌だと言ったら？

その時はお前たちも敵とみなす。

簡単に倒せると思ってるの？

…………。

俺にこれ以上、召喚師を殺させるな。

……結局名乗らなかったけど何者なの？ 召喚院については詳しそうだったけど。

オーン様だけでなくグラデンス様にも 恨みを持ったようだし、

グラデンス様なら何かわかるかも しれないわね。

そんな話は後だ。 まずはここを抜けるぞ。

まあ、弱っちいお前たちは

少しここで魔神の力をもらった方が いいかもしれないがな。

性格が魔神みたいなヤツが何を 言ってるんだか……。

ルジーナのヤツ、昔に頭だけ ここにいたことがあるんじゃない？

セリア、想像すると 気持ち悪いから止めて……。

さあ、Shou-chanも行きましょう。

……Shou-chan。

アンタさっきの館から妙におとなしいけど 何かあったの？

……まあいいわ。 言いたくないなら聞かない。

どうせアンタのことだから 何があったのかは想像つくけどね。

パリス、行こう！

Shou-chan……。

あまり考え過ぎないでね。

あなたはあなたの信じる行動をして。

きっとそれが道を切り開くって 私は信じてるから。