海ね……。

赤い色をしているけど 確かに海ね……。

…………。

おい、お前ら……。

ルジくん、ゴメンね。

いくら暑くて汗をかいたからといって

さすがにこんな所で 水浴びをしたりしないわ。

だから！ 興味ねーって言ってるだろ！

気持ち悪い……。

テメーら上等だ！ 覚悟はできてんだろーな！

フフフッ、相変わらずの低能ぶりですね。

よくこの地でここまで生き残れたものです。

テメーは！

モーラ！

皆さん大丈夫ですか？

なぜ、橋を渡らずにこの地に？

テメー、よくも抜け抜けと そんなことを言えたもんだな……。

なるほど。

低能は低能なりに 状況は理解できているようですね。

それでは、答え合わせをしてあげましょう。

私には邪魔に思える敵がいくつかいまして

それをあなたたちに 倒してもらおうと思ったんです。

…………。

１つは絶望の橋の先の地を住処とする魔獣。

１つはこの地と同じ名を持つモノ。

Shou-chanが何かの加護を受けて 移動しているのはわかっていたから

ベイオルグの名前を出せば そこに飛ばすのではと思ったのですが

私の予想は当たったようですね。

ティリス……

フフッ、セリア、大丈夫です。 その者の選択は間違っていません。

この地は、イシュグリアで唯一、 魔神に支配されていない地なのですから。

どういうこと？

この地の魔神は すでに滅ぼされているのです。

ベイオルグという名の鎧にね。

テメー、俺たちをまだナメてやがるのか？

それとも、お前たち魔神は 鎧に倒されるほど弱いってのか？

ロクガイ……。

あ？ なんだって！？

フフッ、その金髪の女も 少しは教養があるようね。

私の中での低能ランクが はっきりしたわ。

んだと、コラ！

ルジーナ、少し黙ってて！

モーラ、つまりこの地を支配していた魔神は ロクガイによって倒されたということね。

かつて異界の技術者が作ったとされる 意志を持つ鎧“六鎧（ロクガイ）”。

その１つが。

ええ、そうです。

でも、私もそれ以上は知りません。

ただ、アレが私たち魔神にとって 脅威であることは確か。

だから、うまくあなたたちと 潰し合えばと思っただけ。

“意志を持つ鎧”か。

私も図書館にいた女性から 少しだけ聞いたことがあるわ。

パルミナの四戦士の王女が着ていた鎧とかが その１つって言われてるのよね？

ええ、他にもいくつか 六鎧と予測される物はあるけれど

まだ研究段階ではっきりとは していないわ。

その中には誰も装備していない状態で 自発的に動いている

鎧と呼べないようなモノも いくつかあるわ。

その１つがこの地で 未だに動いているというのね……。

ええ、そうです。

この海岸の先に、ベイオルグの開発者が 研究を行ったとされる場所があります。

興味があるのなら そこに行ってみることをお勧めします。

ベイオルグがあなたたちを敵とみなすか どうかはわかりませんが。

ケッ、わざわざそんな危険な場所に なんで行かなくちゃならねーんだよ。

おい、Shou-chan！

女神さんを呼び出して別の場所に 移動させてもらえ！

ティリス様をそんな便利な道具みたいに 言わないで！

それにその研究所には 行かないとダメよ。

ハァ！？

それは、まさかパリスさんの 趣味のためじゃねーだろーな？

バカなことを言わないで。

まったく私心が無いわけじゃないけど 召喚院の１人としての発言よ。

おそらくその研究所には

かつてのイシュグリアの様子について 書かれた資料が残っているはず。

それは、この地の調査を進める上で 貴重な情報になるに違いないわ。

私たちはイシュグリアについて 無知過ぎる。

いつどこで誰に騙されるかもわからない 状況で、

情報不足のまま調査を続けるのは危険よ。

そうね。 パリスの言ってることはもっともだわ。

ルジーナ、まだ何か文句ある？

ケッ、好きにしろ。

俺は勝手に動かせてもらうだけだ。

勝手な男……。

Shou-chan、行きましょう。

もしかしたら、ティリス様が私たちを

ここに運んでくださった理由も わかるかもしれないわ。

……パリス。

きっとティリスは何も 考えて無かったと思うわ……。