ティリス
ここは……廃墟……? 元は結構大きな街だったみたいだけど……。

ティリス
ギャレットが向かっていたのは この先でいいのかな?

ルジーナ
ああ……。 この先に……間違いねえよ。

メル
…………。

ティリス
なら、急ごう! 今ならまだ追いつけるかも。

???
その前に、連れている者をこちらに 引き渡してくれるとありがたいのですがね。

ルジーナ
ベルツ……。

ベルツ
メルをそちらに確保されてしまったのは、 想定外でした。

ベルツ
あなた方がどういう目的で この地にいるのか知りませんが

ベルツ
召喚院にとって彼女など無用な存在のはず。 どうか、こちらに渡してくれませんかね?

ティリス
そんなの、できないよ!

ティリス
あなたに渡したら、 連邦に連れて行っちゃうんでしょ!?

ベルツ
もう知ってると思いますが彼女はギャレットとともに魔神復活を企んでいたのですよ。

ベルツ
そんな人間を、あなたたちが 保護しなければならない理由はないでしょう

メル
…………。

ティリス
で、でも、だからって、 彼女を見捨てることなんかできない!

ベルツ
ふぅ……そもそも、あなたたちは彼女が どういった存在であるのかご存じですか?

ティリス
えっ、“どういった存在”って……?

ティリス
召喚術や戦いの訓練はしているかも しれないけど、普通の女の子でしょ?

ルジーナ
……………。

ベルツ
女神の力をもってしても、人間とそれに 近しい存在の差異は見抜けないようですね。

ベルツ
彼女は特殊な技術によって、ラナスに…… アベル機関によって造られた存在なんですよ

ティリス
造られた!? それって……?

ベルツ
メル……あなたからも 答えてあげたらどうですか?

メル
…………。

メル
彼の……言う通り……。私は…… ラナス様とギャレットによって造られた……

ティリス
そんな……人が人を造り出すなんて……。

ベルツ
彼女を造った技術は、 モルデリム支配下のラクシュルトより

ベルツ
ラナスたちが持ち帰ったもののようです。

ベルツ
かの地は、イシュグリアの中でも機械技術と 生物培養技術の発展が著しかったですからね

ベルツ
もっとも、 それでも人として活動できる個体……

ベルツ
つまり彼女を誕生させるまでには幾度となく 失敗を繰り返すことになったらしいですが。

ティリス
メル……。

ベルツ
彼女は生まれてまだ数年と いったところでしょうか。

ベルツ
ここまで急速に体が成長していることを 考えると……

ベルツ
余命はそれほど長くはないでしょうね。

メル
…………。

ティリス
そんな……じゃあ私たちが救っても、 メルは……!

ベルツ
もう俺の言いたいことはわかりますよね。

ベルツ
寿命もあと幾ばくもなく、未来がない上、

ベルツ
信じていた者…… ラナスすらも失った空っぽな存在、

ベルツ
それがメルです。

ベルツ
そんな人間を守る意味などありません。 もちろん我々が争う必要も。

ベルツ
さあ、わかったら 彼女を俺に渡してください。

ティリス
で……でも……。

ルジーナ
ハッ! さっきから黙って聞いてりゃ おかしなことぬかしやがるぜ。

ルジーナ
言ってるテメーは、この女とどう違う?

ルジーナ
俺の目の前から消えて、連邦上層部の 言いなりになってるテメーはよ!

ベルツ
……俺が彼女と同じとでもいうつもりかい? まったく笑えない冗談だね。

ルジーナ
いいや、同じさ。

ルジーナ
今のテメーはギャレットたちを捕らえ、 その計画を阻止するって目的があるだろうよ

ルジーナ
だが、それが終わった後は、 一体どうするつもりだ?

ベルツ
…………。

ルジーナ
連邦高官たちに言われるまま、 アベル機関に代わる秘密機関の長官になり、

ルジーナ
一生操り人形でもやるつもりか?

ベルツ
……秘密機関の長官、か…… よく知っているな。

ルジーナ
あんまり俺を舐めるなよ。

ベルツ
なら、俺がどういう状況なのかも 知っているだろ……。

ルジーナ
召喚の真の力を求め、それが叶わなかったら 今度は生き残ることに精一杯ってか?

ルジーナ
ケッ、それこそ笑えねー冗談だぜ!

ベルツ
…………。

ベルツ
……どうやら、穏便に引き渡してくれる気は ないようだね。

ルジーナ
ああ、今のテメーには渡せねーな。

ベルツ
……わかった。ここは引こう。

ベルツ
俺にとっても、お前たちと 争っている場合じゃない。

ベルツ
今はもう1人……ギャレットを 阻止することが先決だからな。

ティリス
ベルツ…… どうしてそこまで……。

メル
…………。

ルジーナ
……この先に行けばわかる。 とにかく進むぞ!

ティリス
う、うん……!