チッ……アイツはもっと先か……。

ま、待ちなさい、ルジーナ。

ベルツはおそらくアベル機関から 隠れながら進んでいる……。

そんなに迅速な移動はできないはず。 このあたりにまだいる可能性も……。

アホか、テメーは！

そのアベル機関に見つからない内に、アイツ を捕まえたいから急いでいるんじゃねーか！

それに、アイツより先行すれば、 網を張って待ち構えることだってできる。

そんなことも分からねーのか！？

クッ……コイツは相変わらず……。

あ、ルジくん！！

テメーらか……。

ベルツさんのことを追っているのか？

分かりきったことを聞くな。 今はテメーらに構っている暇はねえ。

……急ぐぞ！！

ま、待ちなさい！！

せっかくShou-chanたちと 出会ったんだから、

現状での情報共有ぐらいした方がいいわ！

そうよ。

アンタ、ベルツを追ってるみたいだけど、 アイツの目的って何なの？

知ってるんだったら教えてよ！

…………。

ルジーナ……お前のことだ。

ベルツさんが何をやろうとしているか、 大体のアタリは付けているんだろ？

俺たちにも、教えてくれないか？　

それがアベル機関の目的に 繋がっているんだとしたら、俺たちの……

いや、召喚院の今後の行動の指標として 知っておかねばならないことだ。

それによっては先程会った あの二神の言ったことの真偽も分かる……。

二神……？ テメーら誰かと……。

チッ……仕方がねえ。 いいだろう、教えてやる。

その代わり……。

分かってる。 こっちで得た情報も、お前に教える。

フン……。

召喚術は、カルナ・マスタが作り出したもの だってことは、覚えているな？

ええ、まあね……。

カルナ・マスタを倒したら、 召喚術も消えるんじゃないか？

って、イシュグリアで話してたからね。

あの時、ベルツのやつは召喚術を

「カルナ・マスタが神を倒すための呪い」 と言っていたが、

じゃあ具体的に、 どういう目的で編み出されたんだと思う？

…………？

カルナ・マスタが神を倒すための呪い……。

そうか…… アルザ・マスタを封じる封神儀のことか！

フン……相変わらず、無駄に察しはいいな。

そのとおりだ……。

召喚術はカルナ・マスタが 悌神皇アルザ・マスタを封印するべく、

封神儀を喚び出し、 使役するために編み出したものだ。

あの封神儀を召喚するためって…… あれら全部喚び出したっての……？

どんだけの力が消費されているのよ……。

人間に及びもつかない力なのは確かだが、 それだけじゃねえ。

カルナ・マスタは、 さらに封印を完全にするため

アルザ・マスタをその身の中に封じた 封神竜に、さらに自身の力を宿させた。

それは、カルナ・マスタにとって もう一つの力の源泉というべきもの……。

カルナ・マスタのもう一つの力の源泉……？

まさか、それって……。

ああ、俺たちが使っている召喚術の源…… いわば、真の召喚の力とも呼べるものだ。

真の召喚の力……。

ベルツやラナスの野郎の目的は、

おそらく、その力を獲得し、 自らの身体に宿すことだ。

…………。

なるほどな…… さっき会った二神との話とも合致する。

すべては、封神竜……。 いや、そこに宿る真の召喚の力、

そして、封じられたアルザ・マスタを 中心に動いているというわけか……。

でも、真の召喚の力を 自らの身体に宿すって……。

女神の私が言うのもなんだけど、 十神の長たるカルナ・マスタの力。

さすがに人間の身体で受け止めきれる わけがないと思うんだけど……。

普通の方法では無理だな……。

だが、そのために用意したのが、 ロッカザルムで手に入れた封神鎧の力だ。

封神鎧の力？ どうやって使うのよ……？

ベルツが奪ったあの簒神奪珠とやらは、 封神儀の力をその身に宿らせるものらしい。

封神儀の力という“器”があるならば、

カルナ・マスタの力を受け止めることも 不可能ではない……ってことなんだろうな。

そんなこと、本当にできるのか……？

さあな……。 だができたとしたら、もう俺たち……

いや、この世界にいるすべての者にとって

手に負える存在じゃなくなるのは、 確かだろうよ。

さて、俺の情報は話した。 今度はテメーらが話す番だ。

あ、ああ……。

フン、やはりほかの世界の封神儀は、 補助的な役割でしかなかったか……。

そして、封神竜を守る二神……。

気になっていたんだけど、もし封神竜から カルナ・マスタの力を奪い取ったら、

アルザ・マスタも復活しちゃうんじゃ……。

ああ、するだろうな。

だが、そもそもそいつを 封じていた力自体を手にするんだ。

アルザ・マスタを再び封じ込める…… もしくは滅ぼすことも可能。

少なくともベルツとラナスは そう考えているんだろうよ。

……………。

互いに用件済んだな。 俺たちはベルツを追わせてもらう……。

アイツから、封神鎧の力を宿した 簒神奪珠を取り上げれば、

すべてはそれで済む話だからな。

テメーらは……まあ、好きにしろ。

ちょっと、待ちなさいよ！ まったく……。

悪いわね、Shou-chan。

会えたばかりだけど、 私はあのバカに付いていくわ。

これも任務だしね……。

お互い、今はできることを 頑張りましょう。

行ってしまったな……。

…………。

ルジくんの様子…… ちょっと変じゃなかった？

確かにね……。

偉そうなのは 相変わらず変わりないんだけど、

なんというか……。

………余裕がない、という感じだったな。

うん……。

ベルツさんのこともある。 アイツも必死なんだろうさ……。