ここまでくれば、 ひとまず大丈夫かしら？

勝ったのに、逃げ出すことになるとは、 思わなかったわ……。

まったくね……。

アベル機関のあの２人の姿も 完全に見失ってしまったし……。

あの魔動人形…… やっぱり私たちのことを追ってくるかな？

………いつ襲われても良いように 覚悟だけはしておいた方がいいかもね。

そういえば、さっきはアベル機関の奴らと 一緒だったから聞けなかったけど、

グラデンス様より、私がこの世界にいると 聞いたって言ったわよね？

当の本人はどうしたの？

野暮用があるとかで、 １人で先に行ってしまったわ……。

そう…… あの人らしいわね……。

まあね……。

グラデンス様がいるのだったら、 まずはあの方に報告してから……

って、思ったけど、 いないんじゃ仕方ないわね……。

とりあえず、私がこの世界を調査して 分かったことを、共有しておくわね。

うん。

まず、召喚術研究所から受け取った機器で 封神儀の所在を調査していたんだけど、

どうにも反応がおかしいの……。

おかしい……？

ええ、あの魔動人形のおかげで、 奥地までは調査できなかったんだけど、

これまでの世界みたいに、強大な力…… 神を封じる力を持った存在が

どこにも見当たらないの。

見当たらない……？

ええ。

えっと、さっきの魔動人形が 封神儀ってことは……？

あれは確かに強かったし、

これまで封神儀に類する反応も 僅かにあったけど、

あれを封神儀そのものと考えるには、 反応が小さすぎるわ。

というか、封神儀の反応…… 神を封じる力の反応は、

微弱ながらこの世界の そこかしこで確認できたりするのよ。

うーん、結局どういうこと……？

ここからは私の推測も入るんだけど……

この世界そのものが 封神儀なんじゃないか、って思ってるの。

この世界そのものが……！？

もしそれが本当だとしたら、 一体どうすればいいのかしら……？

世界そのものが相手じゃ、 さすがに、どうしようもないわ……。

反応の強さは、世界の奥地の高地に 近づいていくほど強くなっている。

そして、アベル機関のあの２人も、 あの高地を目指していたようだったわ。

高地の頂上に何かがある……ということね？

ええ、おそらくね……。

アベル機関の動向が、話の裏付けに なっているのがちょっと癪だけど。

じゃあ、とりあえずはあの高地の 頂上を目指すってことで決まりだね。

そうね……。 もし当てが外れて何もないのだとしても、

アベル機関の者たちを 放っておくわけにもいかないしね。

あの高いのを登るのね……。

任務とはいえ、考えただけでも ちょっと億劫になるわね……。