ここね、夜な夜な怪物が出るって 噂されている場所は。

うん、そうみたい……。

…………。

殿とスズネ姫の命とはいえ、 お前らの助力を仰ぐことになるとはな……。

まあ、そう堅苦しく考えなくとも いいのではないですか。

姫様とゲンバ殿は 無事、和解したのですから、

カゲヌイ殿も、拙者たちと 親睦を深めようではありませんか！

…………。

お前がこの場に来るとは 聞いていないのだが……。

私も同行して来るとは思わなかったわ……。

何をおっしゃる！

セリア師匠が行くのなら、 たとえ火の中！水の中！！

どこまでもお供する所存ですよ！！

……………。 俺は独自でこの寺を探る……。

お前らもお前らで、 好きに動くといい。

あ、カゲくん！！

……行っちゃった。

うーん、もうちょっと仲良くできるかな って思ったんだけど……。

ま、いきなりは無理よ。

ああいうタイプは根が真面目そうだから、 うまく敵、味方の切り替えができないのよ。

カゲヌイ殿はゲンバ殿の直属のシノビで、 その名は知られていても、

城内の者が接する機会は、 ほとんどありませんからなあ。

何を隠そう、拙者もあの方とまともに 話すのは、さっきが初めてでしたから！

アンタは馴れ馴れしすぎよ……。

ま、それはともかく……。

なんか…… 雰囲気あるところだよね……。

亡霊とか出そうな感じで……。

ちょ……やめてよ、そういうこと言うのは！

ずっと気にしないように していたんだから！！

そ、そういえば、この寺にまつわる 怨霊の話を聞いたことがあります。

だから、やめてってば！

……その話、どんなの？

ティリス……！？

ふむ……ではお聞かせしましょう。

この寺には、ある奉公人の少女が 弔われているらしいのですが、

その少女というのは、主人の大切な香炉を 盗んだという疑いをかけられたらしいのです

…………。

その少女は無実を主張したのですが、 誰も信じる者はおらず、

周囲から責められて、 ついには自ら命を絶ってしまいました。

その後、問題の香炉が違う場所から発見され 少女の潔白が証明されたのですが、

濡れ衣を着せられて亡くなった彼女の魂は いまだに成仏できず、

ついには怨念となり、 この寺をさまよっている……とのことです。

…………。 う～ん、その話、本当……？

え、なぜですか？

……さすがに出来過ぎな話で、 ちょっと嘘くさいかなぁ～…って思ったから

いや、嘘ではありませんよ！ ちゃんと街で聞いた話です。

そもそも、「夜な夜な怪物が出る」 という噂があったからこそ、

拙者たちは、 ここを訪れたんじゃないですか！

それは……まあ、そうなんだけど……。

さらに聞いた話では、 少女の怨念は悪霊を吸収して巨大化。

地響きをたてて……

この寺の敷地内を……

練り歩いているらしいのです！

へっ……？

……………！

……………！！！！

…………！

え、でも…… これって………。

ま、まさか…… ほ……本物の……亡……霊！？

セリア！ もっとよく相手を見て！！

え……？

確かに不気味な容姿だけど、 実体はちゃんとあるみたいだし、

幽霊や亡霊のたぐいじゃないよ！！

むしろ、よーく見てみると、

ベクタスとかでよく見かけた 機械人形に近い感じだよ！

……………。

そう言われてみれば……確かに……。

まったく……サクノシン！

アンタが変な話をしたから、 勘違いしちゃったじゃないのよ！

………………。

ちょっと、聞いてるの！？

………………。

気絶しちゃってるよ……。

まったく、コイツは……。

クッ……そもそも私たちの目的は、 コイツの調査、討伐だったわね！

Shou-chan！ まさかアンタまで気絶してないわよね！？

行くわよ！！