セルヴィア
とうとう王城近くにも 敵が押し寄せてきたか。

セルヴィア
そろそろ潮時だな……。

フェリーネ
シリウスお兄さま…… 結局、戻ってきませんでしたわね……。

セルヴィア
………………。

フェリーネ
おそらく、これ以上待っても時間の無駄。 私は先に向かうことにしますわ。

セルヴィア
……わかった。

セルヴィア
…………。

???
姉上……!!

セルヴィア
シリウス……遅かったな。

シリウス
父上が姿を消したと噂で聞きました。 まさか、もう……!?

セルヴィア
……安心しろ。 父上なら、まだこの城内におられる。

シリウス
そうですか……。 間に合ってよかった……。

セルヴィア
……そもそも、あの噂自体、 私が流したものだ。

セルヴィア
貴様に決断を迫るためにな。

シリウス
…………!!

セルヴィア
さて、時間は十分に与えた。 貴様の出した答えを聞かせてもらおうか。

シリウス
…………。

シリウス
わ……私は……。

セルヴィア
民のことか?

シリウス
…………!!

セルヴィア
民を救えるものであれば、 私も救ってやりたい……!!

シリウス
ならば……!!

セルヴィア
だが、状況がそれを許さん!

セルヴィア
我々は皇族だ! 国を守らずして、何を守るというのだ!?

シリウス
…………。

セルヴィア
私たちは民衆を見捨てることを 選択するわけではない……。

セルヴィア
歴代の皇帝たちが死守してきた このバリウラ帝国の未来を守るため……

セルヴィア
残された選択肢の中から、 最善のものを選ぶのだ……。

シリウス
…………。

セルヴィア
安心しろ……。

セルヴィア
必ず……憎き神軍を滅ぼすために 私たちはこの場所に戻ってくるつもりだ。

セルヴィア
そしてその後は、 帝国を復興させてみせる……!!

シリウス
……わかり……ました……。

シリウス
私は、父上…… そして、姉上に付いていきます……。

セルヴィア
そうか……付いてきてくれるか。

セルヴィア
……もはや時間は残されていない。 すぐに向かうぞ。

シリウス
は、はい……!!

シリウス
すまない、愛する民たちよ……。

シリウス
どのような経緯にせよ、民たちを見殺しに してしまうことになってしまった……。

シリウス
だが、どれだけ時間がかかろうが、 必ず民たちの遺志を継いでみせる……。

シリウス
絶対に……。

???
待って……!!

ミューゼ
シリウスお兄様…… 間に合ってよかった……

シリウス
ミューゼ……なぜここに!?

ミューゼ
シリウスお兄様が王城に入っていくのが 見えたから……。

ミューゼ
…………。

ミューゼ
行くのね、どこか遠くへ……。

シリウス
…………!!

シリウス
ミューゼ……。

ミューゼ
詳しいことは知らない……。

ミューゼ
でも、お兄様たちの様子を見ていれば 分かるわ……。

シリウス
…………。

シリウス
この帝都は間もなく陥落するだろう……。

シリウス
ミューゼ……お前も一緒に……。

ミューゼ
…………。

シリウス
ミューゼ……。

ミューゼ
約束して……? また、戻ってくるって……。

シリウス
…………。

シリウス
……分かった、約束しよう。

ミューゼ
ありがとう……シリウスお兄様……。

シリウス
…………。

ミューゼ
…………。

サレアス
ハァ……ハァ……。

サレアス
神軍のヤツら……。 ここまでしつこいなんて……。

ドゥーレ
グハッ……。

サレアス
ドゥーレ兄さん!?

ドゥーレ
大丈夫……だ……。 こんなところでやられたりはしない……。

サレアス
でも……その傷じゃ……。

ドゥーレ
戦うんだ、サレアス! まだ俺たちの任務は終わっていない!

サレアス
あ……あぁ!

ベルデッド
敵がどんどん集まってくる……。 このままでは……!!

ベルデッド
クッ……!!

ラジア
ベルデッド姉様、大丈夫……!?

ベルデッド
ええ……民のためにも、 ここで倒れるわけにはいかないからね。

ラジア
え、それは……!?

ベルデッド
ああ、これね。 帝国に伝わる腕輪、オドルワンスよ。

ベルデッド
セルヴィア姉さんが、 フェリーネを使いに出して、

ベルデッド
私のもとへ持ってこさせたの。

ベルデッド
なんでこのタイミングで渡してきたのか、 よく分からないけどね……。

ラジア
……そう、そうだったのね。

ラジア
私、セルヴィア姉様から、 その腕輪について聞いたことがあるわ……。

ベルデッド
え……?

ラジア
…………。

ラジア
ベルデッド姉様…… 私がここの敵を引き付けます!

ラジア
その隙に突破口を開き、 民とともに帝都から脱出してください!

ベルデッド
何をいきなり……?

ラジア
このままでは、私たちは神軍に包囲される だけです。

ラジア
今ならまだ……!

ベルデッド
ふざけないで……! あなたを残して行けるわけがないでしょ!!

ラジア
勘違いしないでください!

ラジア
私は、私が守りたいもののために、 この提案をしているのです!

ラジア
ベルデッド姉様が、今、守りたいのは 何ですか!?

ベルデッド
そ、それは……。

ラジア
ベルデッド姉様……。

ラジア
ベルデッド姉様は、民を安全なところまで 導いてあげてください。

ベルデッド
…………。

ベルデッド
分かったわ……。

ベルデッド
だけど、あなたも……!

ラジア
分かっています……。

ラジア
私もむざむざ 神軍にやられるつもりはありません。

ラジア
包囲を突破できたら、必ずベルデッド姉様の もとに向かいますわ。

ベルデッド
…………。

ラジア
…………。

ラジア
さあ、早く行ってください……!

ベルデッド
………すまない。

ラジア
不思議ですわね、ベルデッド姉様……。

ラジア
少し前まで、私たち兄妹は いがみ合うことしかできなかった……。

ラジア
なのに、今はこうして民を助けるという 1つ目的で協力し合ってるんですもの……。

ラジア
そして……私もドゥーレ兄様と同じ、 捨石となる道を選んでいる……。

ラジア
でも、悪い気分じゃないわ……。 兄様もきっと同じ思いだったのね……。

ラジア
来ましたわね……。

ラジア
ですが、ベルデッド姉様には……。 バリウラの民には指一本触れさせませんわ!

ラジア
お父様が研究していた この悪魔の石を使ってでも!!

ミューゼ
…………。

ミューゼ
シリウスお兄様……。 この国は……今日、滅ぶわ……。

ミューゼ
だから、私は……私たちは…… 最後の時まで、この国の民とともに……。

それから数時間後……帝都バリウラは神軍の手に堕ち、バリウラ帝国はグランガイアから姿を消した。


第三皇女ベルデッドは、生き残った民を連れて神軍の包囲網を突破。その後、平民を装って民とともに新天地を目指す一団に加わったという……。


異界に渡ったバリウラ皇帝、そして第一皇子シリウスたちは、神軍と対抗すべき力を得るため、その地に棲まう神獣に戦いを挑む。


しかし、結果は敗北……。バリウラ皇帝も深手を負い、遂にはこの世を去ってしまう……。


その後、シリウスはその異界の地で神獣と共存する道を選択。第四皇女ミューゼとのグランガイアに戻る、という約束は最期まで果たせなかったという……。