かつて複数の国家を強大な軍事力で従え、隆盛を極めたバリウラ帝国。皇帝により才能を見出された第八皇女アリスは幼少より一切の自由を奪われ、過酷な戦闘訓練を課せられた。


そして、皇帝からの指示に従い無感情に命を刈り続ける日々の中、彼女の精神は狂気に蝕まれていった。


しかしアリス本人も気づかないうちに、罪の意識が少しずつ少しずつ、心の奥に積もっていっていた。そして……


これは、バリウラ帝国が神々の怒りに触れ滅ぶ前の物語である。


アリス
……ここが、帝国の北部。 こんな辺境に来たのは初めてね。

アリス
ねぇ、それで私はここで何をすればいいの?

謎の少女
ある人物を殺害し、その遺体を持ち帰る。 それが皇帝陛下からのご命令よ。

アリス
ある人物……?

謎の少女
この先の魔術研究所跡に入った調査部隊が、 そいつに壊滅させられたって話なの。

謎の少女
辛うじて生き残った兵士の話じゃ、 無数の武器を瞬時に出現させたらしいわ。

謎の少女
名前は…… 確か、“シード”って言ったかな?

アリス
シード……聞かない名ね。

アリス
とにかく、その男を殺せばいいのね?

謎の少女
うん、その通り。 それと遺体を持ち帰る事も忘れずにね。

謎の少女
未知の力を持っているみたいだから、 魔術師に研究させるんだって。

アリス
ええ……わかったわ。

アリス
ところで、 1つ聞きたいことがあるのだけど。

謎の少女
ん? なぁに?

アリス
私にお父様の命を届けに来たあなたは、 一体何者なの……?

謎の少女
うーん、それって重要かしら?

アリス
わからない……でも、あなたとは 以前、何処かで会っている気がして……。

謎の少女
たぶん、気のせいだと思うけどな。 私があなたと会うのは、初めてのはずだし。

謎の少女
さ、研究所跡はこの先よ。皇帝陛下のために 早くシードを殺してきてよ。

アリス
…………わかったわ。

アリス
それがお父様の望みなら、何だって従うわ。 誰が相手だろうと構わない……。

アリス
そう…… 私は、そのために生きてきたのだから……。

エルザ
アリスにまた暗殺指令…。

エルザ
アリスは少しずつ、人間としての 正常な感情を取り戻しつつあるのに。

エルザ
お父様はどこまでも、 アリスから感情を奪おうとするのね……。

エルザ
私ができるのは……あの子をできるだけ 醜い戦いから遠ざけることだけ……。

エルザ
……私がシードを。 あの子の標的を、私がこの手で殺す!

エルザ
あの子に笑顔を… もう一度笑顔を取り戻すために!