……私が滅ぼされるというのか？ 人ごときの手によって……。

いや違う……。 私が敗れたのは人だけの力ではない。

小賢しきモーラ、それと別の力も 働いているな……。

神々…いや…これは…人だと？

……私は人間のもう１つの特徴を 忘れていたようだ。

人間よ。 覚えておくがいい……。

私は貴様に滅ぼされるのではない……。

私自身の無知と弱さが 私を滅ぼしたのだ……。

ラクシュルトのすべてを管理下に置く私が 人間などに滅ぼされるはずがないのだから。

Shou-chan！ 大丈夫？

フー、どうやらこっちは無事に 終わったようね。

さすがShou-chanね。 助かったわ。

こっちはあの後、大変だったのよ……。

オーン様が一度は敵を倒し尽くしたんだけど その後、さらに増援が来て……。

最後は凄い敵の数になってしまったから それぞれ散開して上に向かうことにしたの。

その後に気付いたんだけど、

どうやら倒せば倒すほど 次の増援が増える仕掛けがあったようなの。

私は敵を避けながら来たから それほどでもなかったけど

オーン様とかは大変なことに なってるでしょうね……。

キャアーーーーー！

……噂をすればね。

ケホッ、ケホッ……。

オーン様、だから敵を倒すとさらに増援が！

知らぬ。 増えてもまた蹴散らすだけだ。

一緒にいる私の身にもなってください！

セリア、大丈夫？

パリス！ それにShou-chanも！

ハー、どうやら何とか魔神は倒したようね。

Shou-chan、褒めてあげるわ。

フン、セリア、お前が邪魔をしなければ もっと早く着いたんだがな。

私がいなければもっと多くの敵が 現れてましたよ！

ね、ねえセリア、どうして オーン様と一緒にいるの？

ああ、あの後、私が進んでいた道に 急に敵が増えたから

どうしたのかと思ったら側に オーン様がいて……。

で、これ以上被害が増えないよう 一緒に来たってわけよ。

そ、そう…お疲れ様……。

で、ルジーナは？

見てないわ。 まだ来てないの？

ええ、彼ならこの罠には気付くだろうから 先に着いていると思ったんだけど……。

また変な敵と遭遇してるんじゃない？

アイツの場合、頭はいいかもしれないけど 変なことに巻き込まれやすいからね。

ハハハハッ、皆さん彼のことを よくわかってらっしゃる。

幼馴染として嬉しい限りです。

誰！？

皆さんはじめまして。

私はエルガイア連邦の ベルツと申します。

エルガイア連邦！？ どうして連邦の人がここに。

イシュグリアは誰のものでもありません。 私がここにいても問題はないでしょう？

それに、ここへ来る方法なら 他にもありますからねー。

そうですよね。 最初の召喚師オーン殿。

…………。

それで、連邦の人間が私たちに何の用？

ハハハハッ、 いや噂通り気持ちの良い方ですね。

セリア召喚師さん。

そして噂以上に美しい。

な、何よいきなり！

照れる姿もまた素敵ですね。

それに、そちらのパリスさんも また美しい女性ですね。

私の幼馴染を羨ましく思いますよ。

ベルツさんでしたっけ？

あまり余計な話はしない方が 良いですよ。

こちらには……。

えー、もちろんわかっています。

オーン殿を怒らせる気など 私にはありません。

それにしてもさすがパリスさん。

皇国の貴族だけあって 美辞麗句には慣れていらっしゃる。

…………。

私はただ幼馴染に会いに来ただけなのですが まだ来ていないようですね。

では、それまでに少し お話でもしましょうか。

アクラス召喚院設立のお話でも。

ワシはそれよりも、お主がそれをどう 知ったかを聞きたいんじゃがな。

グラデンス様！

これはこれはグラデンス殿。

うまくまいたつもりでしたが さすがですね。

フム、追われていたことを 隠すつもりもないということか。

では、ワシも単刀直入に聞こう。

お主じゃろう？

ミーファやシュスイに余計なことを 吹き込んだのは。

ええ、そうです。

本当のことを話しただけですが 何か不都合でもありましたか？

いや、問題無い。

ただ、できればワシの口から 伝えたかっただけじゃ。

ハッハッハッ！ さすがはグラデンス殿。

噂以上に面白いお方だ。

また別の機会にゆっくりと お話ししたいものですね。

ワシは面倒な話はごめんじゃよ。

エルガイア連邦の上級外交官でありながら ヴェーダ剣術の達人であるベルツ殿。

それとも二つ名である“クローザー”と 呼んだ方がよいかの？

“クローザー”ってどんな事案も 必ず自陣に有利な内容で閉じるという……。

私も聞いたことがあるわ。

かなり強引な手を使うっていう 悪い噂と一緒にね。

私なんかのことを知っていただいており 光栄です。

ですが、私などルシアス様を倒された 皆さんからすればまだまだひよっこ。

ベルツとお呼びください。

……時にオーンよ。 もう少しだけガマンしてくれんかの。

フン、わかっている。

では、その剣に触れている手を 下げてくれんかの。

…………。

クソッ、やってられねーぞ！

Shou-chan！ どこにいやがる！

空気を読まないこの声は……。

アイツね……。

お前らこんな所にいやがったのか！

Shou-chan！ どうやらモルデリムは倒したようだな。

フン、俺に感謝するんだな。

お前がヤツに勝てたのは、 俺がシュスイの野郎を止めてたからだ。

アンタ、シュスイと戦ってたの？

ああ、あの野郎なぜか俺が進む道に いやがった。

まあ俺の敵じゃあなかったがな。

では、お前はシュスイを倒したのだな。

あ、いやそれなんだが アイツ、うまく逃げやがって……。

お、落ち着いてくれ！ 俺は負けたわけじゃない！

ハハハハッ、相変わらずだね。 ルジーナ。

お、お前はベルツ！

なんでこんな所にいやがる！

久々に会った幼馴染であり 親友にその発言はないだろ。

なに、アンタたち知り合いなの？

ええ、同じ師から剣術を学んだ 大親友です。

悪いけどアンタ、友達はもう少し 選んだ方がいいわよ。

ってどっちもか。

うるせー！

だいたい俺とこいつは腐れ縁なだけで 親友でもなんでもねー！

それよりベルツ！ 俺の質問に答えろ！

お前はここで何をしてる！

ルジーナ、キミに会いに来たんだよ。

あん？

もう演技はそれくらいでいいよ。

キミの任務は終わりだ。 連邦に帰ってきてくれ。

な、どういうこと！

いちいち惑わされんな！ こいつは昔からこういうヤツなんだよ。

冷たいなー。

俺ほどお前のことが好きな男は いないと思うよ。

え……。

だから惑わされんなって言ってるだろ！

Shou-chan！ テメーも何か言いやがれ！

ハハハハッ、まあいい。

とりあえず私の任務は終わったので 帰らせてもらいます。

皆さんにまたお会いできる日を 楽しみにしてますよ。

そうそう、ルジーナ。

もう任務は終わったのだからキミも皆さんに 本当の名前を教えてあげたらどうだい？

ヴェーダ剣術最強の剣士である証、 “ゼルバーン”という名をね。

え！？

何度も言わせるな。 その名を継ぐ気は無いと言ったはずだ。

ハハハハッ、そんなこと言ったっけ？ 詳しい話は連邦でまた聞かせてくれよ。

それじゃあまた。

…………。

…………。

ケッ、お前らアイツの話を 本当に信じてるのか？

いやまあ、アンタならあってもおかしくない 話だったから。

まあ、最後のゼルバーンの話には 驚かされたけど。

ハン、人が使った名前なんぞに 価値なんかねー。

俺はこの“ルジーナ”様という名前を 世に知らしめたいんでね。

まあいいわ。 アンタが何をしてても関係無い。

どちらにしろまだ一緒に進むんでしょう？

ああ、当たり前だ。 俺の任務はまだ終わってないからな。

そうだろう。 召喚老のお２人さん。

そうじゃな。 引き続き任務を進めてくれ。

当たり前だ。

俺より有能な召喚師なんざ、 召喚院にはいないんだからな。

Shou-chan！ テメーもボーっとしてんなよ。

ベルツの野郎が出てきたってことは 連邦もマジで何かを起こす気だ。

お前は狙われやすいんだ。 しっかり頭を使うんだな。

さて、オーンよ。 ワシらも行くとするかの。

ミーファの居場所とヤツに余計なことを 吹き込んだ者の正体もわかった。

後はミーファにしっかりと ワシらの思いを伝えるだけじゃ。

フン、好きにしろ。

俺は俺の目的の邪魔をする相手を 斬り伏せるだけだ。

フォッフォッフォッ、そうじゃな。

…………。

Shou-chanよ。 カルのことよろしく頼むぞ。

お主がいるからこそワシはあやつを 気にせず自由に動けるのでな。

ハアー、なんか色々と ゴチャゴチャしてきたわね。

Shou-chan！ それでもアンタは忘れちゃダメよ！

アンタの目的はティリスを 助けることなんだからね！

まあ、言わなくても わかってるとは思うけど……。

な、なんでもないわよ！

ホラ、パリスも行こう！

ちょ、セリアちょっと待って！

Shou-chan、 私が言うのもなんだけど

本当に考え過ぎないでね。

あなたが感じるままに動けば きっとそれが正解だって私は知ってる。

だから、前だけ向いて進んで。 横や後ろは私たちが何とかするから。

フフッ、素敵な表情ね。

あなたのその顔を見られただけでも アクラス召喚院に入った甲斐があったわ。

それじゃあ、次の場所へ向かいましょう。

１日でも早く ティリス様を復活させるためにも。