妾が人に後れを取るだと……！？

ありえぬ……なぜじゃ？

クッ……おのれ、大神皇。 滅してなお妾の力を利用する気か……？

悌神皇アルザ・マスタの力によって、 ようやく元の存在に戻ったというのに……。

口惜しや………。

おのれ……

…………。

どうやら封神儀を ちゃんと元に戻せたようね。

さっき、力が開放されたような 感じがしたけど、あれがそうなんでしょ？

良くは分かりませんが、ラカを倒したとは、 さすが、Shou-chan殿！

いや～、拙者やセリア師匠も、 体勢さえ崩していなければ、

Shou-chan殿に加勢して、 大いに活躍するところだったのですが……。

ハァーー……。

もう怒る気も失せたわ……。

Shou-chan～～！ ハァ……ハァ……。

どうしたの、ティリス？ 城内で待ってればよかったのに。

うん。でも、スズネも大丈夫そうだったし、 やっぱり心配だったから。

心配してくれるのは、ありがたいんだけど、 そのへっぴり腰は、なんとかならないの？

だ、だって、この高さだよ。

普通に立ってられるセリアたちの方が、 おかしいよ～！

鍛え方が違うのよ。

というか、そんな格好だと 色んな所が見えちゃうわよ。

色んな所が……

セリアのエッチ！！

エッチって……女同士でしょうが……。

グッ………。

お前は……！！

…………。

アンタ、 どうやらもう戦う力は残ってないようね。

………殺せ。

…………Shou-chan、 そいつを連れて城内に戻るわよ。

いつまでも、 こんなところにいても仕方がないからね。

どうかおやめ下さい、殿……！

止めるな、カゲ！

儂には、これしか……

これしか、詫びる方法が思いつかんのだ！！

ど、どうしたの、この騒ぎは！？

Shou-chan様、セリア様……。

いくら支配されていたからとはいえ、

儂はスズネ様に謀反を起こした上、 あまつさえ幽閉までしようとしたのだ！

その罪……償うには腹を切る以外、ない！

ゲンバ……。

腹を切るって……死ぬってこと？

そんなのダメだよ！！

前にサクノシンもそんなこと言ってたわね。 この世界の風習か何かなの！？

腹を…… 腹を切らせてくれ！！

腹を切るだと……？

お主にそのような資格があると思うのか！！

あなたは……！

罪があるというのなら、 それを断ずるのは主君の権利であり義務。

勝手に己を断罪するなど、 それこそ身勝手極まりない！！

そ、それは……。

クッ……！！

スズネ姫……いえ、お館様、 この者へのご沙汰をお願いします……。

主君の権利……義務……。

………分かりました。

ゲンバ…… あなたは確かに罪を犯したのかもしれません

あなたがどうしても腹を切る…… というのなら、私は止めはしません。

え……！？

ですが、その時は……

私もこの命を絶ちます！

な……スズネ様！？

あなたが、あのラカという女剣士に 支配されたのは、

私への忠義と天武党への対応との間で 板挟みになり、心を悩ませたため……。

ならば、 あなたの意見に耳を貸そうともせず、

お父様の方針を引き継いでしまった 私も同罪です。

あなたが腹を切るというのなら、 私も命を絶たなければ、筋が通りません！

そんな……。

ですが、私やあなたが命を絶ったところで、 それが真の贖罪になるとは思えません。

真に罪の償いは、あらためて民のために、 政を行うことです。

ゲンバ…… もし自分の罪を許せないというのなら、

私の贖罪のために、 力を貸して頂けませんか……？

スズネ様……！

………分かりました。

そのお言葉、このゲンバ、 謹んでお受けいたします……！！

民のため……スズネ様のために、 一層働かせて頂きます……！！

ええ、ゲンバ、 これからも頼りにしてますよ……。

さすが、見事なご裁断です。

すべては、幼い頃にあなたから受けた お教えによるものです、ミョウケイ様。

……バレておりましたか。

２人、知り合いだったの？

はい。

ミョウケイ様は、私の幼い頃、 教育係を務められていた方です。

数年前、在籍していた寺から姿を消されたと お聞きし、心配していたのですが……。

ハッハッハッ…… 諸国を見て回っておりました。

そうだ。もう１人、スズネに扱いを任せたい 奴がいるんだけど……。

…………。

この人は……！

倒したのは、Shou-chanだけど、

この世界の人間だから、 あなたが処遇を決めたほうがいいと思って。

そうですね……。

…………。 さっさと殺しなよ……。

随分神妙な態度ね。

アンタみたいなタイプは、なんとしてでも 生き延びようとするかと思ったんだけど。

…………。

神凰が倒されちゃ、 神妙になるしかないさ……。

それに、一度アレと同化しちまったおかげで

あたしの力は、ほぼ全て向こうに 持っていかれちまった……。

おそらく、あたしはもう刀すら満足に 振るうことはできないだろうさ。

この先、そんな状態で生きていくなんて、 面白くないだろ……？

……その人の言ってることは、 おそらく本当だよ。

一時的な衰弱とかじゃなくて、

以前と比べて身体に宿る力が 大きく減っているのを感じるから……。

…………。

……いかがいたしますか、姫様？

………剣士ラカよ。あなたを解放します。

どこへなりとも、 好きな場所にお行きなさい。

………！

フン……解放されたからって、 あたしが改心するとでも思ってるのかい？

だとしたら、大間違いさ……。

そのようなことは、分かっています。

分かっていて、 あたしを解放するというのかい……。

…………。 いいだろう……

今はこんな身体だけど、いつか必ず、 元の強さを取り戻してみせてやるよ……。

フフフ…… その時になって、後悔しないことだね……。

姫様の決定に 異を唱えるつもりはありませんが、

あれでよかったのでしょうか？

いいのです。

今、あの者を処罰するのは簡単です。

ですが、死を望んでいた彼女を、 我々が罰したところで、

それは本当の意味での 罰にならないでしょう。

戦うこと、殺戮することが 生きがいだった彼女にとって、

それができない身体で生きることこそが、 真の罰となる……

私はそう思っています。

「いつか強さを取り戻す」 とも言ってたけど……。

あの者が強さを取り戻すというのなら、 その時はその時です。

あの者などに揺るがされない国を、 私たちが作っておけばいいだけの話です。

そう……

そこまで考えているのなら、 私たちが口出す必要はないみたいね。

Shou-chan様、ティリス様、 セリア様……

これまでのあなた方のご助力に対し、

私はなんとお礼を申し上げていいか、 感謝の言葉も見つかりません……。

察するに、今後もこの凰刃那原同様に ほかの世界へも調査に向かわれるのでは？

ええ、今も仲間たちが 調査を続けているからね。

そうですか……。

では、Shou-chan様たちの 目的が成就するよう

ご武運を心よりお祈りしております。

そして……

時間ができた時、ぜひまた この世界に遊びに来てください。

私たちは、いつでもあなた方を 心より歓迎いたします！

うん、必ずまた来るよ！！

この世界のこと、そしてスズネたちのことを もっとよく知りたいからね！