スズネ
なるほど……あなた方は違う世界から、 この世界の調査に来られた方々で、

スズネ
ティリス様は、その世界の女神様。

スズネ
そして、Shou-chan様とセリア様は、

スズネ
“しょうかんし”という名の術師様 ……ということですね。

セリア
ま、まあ、概ねそんな感じだと 思ってくれていいわ。

ティリス
えっと……こんなこと聞くのもなんだけど、 私たちの話、信じてくれるの?

スズネ
確かに話だけ聞いていたのなら、 荒唐無稽な内容に感じたと思います……。

スズネ
ですが、ティリス様には 先程、私の足を治して頂きました。

スズネ
あのような術、 私はこれまで見たことがありませんし、

スズネ
また、その……

スズネ
あなた方の格好は、私たちのものとは 少々違っていますし……。

セリア
服装か……。 まあ、たしかにね。

スズネ
それに……

スズネ
話していて、あなた方は嘘をつくような 人たちではないと感じました……。

スズネ
…………。

スズネ
助けて頂いた時、失礼なことを言ってしまい 申し訳ありませんでした。

スズネ
許して頂けると、幸いです……。

ティリス
そんな、謝らなくていいよ!

ティリス
それより、スズネを襲っていたのって、 何者だったの?

ティリス
というか、なんで襲われていたの?

スズネ
それは……。

セリア
……そういえば、あなたは 「国を治める者として……」

セリア
とかなんとか言ってたわね。

スズネ
…………。

若い男性の声
姫様ーーーーーーー!!

ティリス
え、姫様?

スズネ
この声は……!

真面目そうな若者
よくぞ、ご無事で……。 拙者、心配しておりました!!

スズネ
サクノシン、 あなたもどうやら無事だったみたいですね。

スズネ
ゲンバが謀反を起こしたと聞いた時は、 心配しましたよ。

ティリス
えっと、スズネの知り合い?

スズネ
はい、昔から私に仕えてくれていた者で、 サクノシンと言います。

ティリス
へぇー。 私、女神ティリス、よろしくね!

ティリス
こっちは召喚師のShou-chan。

セリア
同じく召喚師のセリアよ。

サクノシン
女神に……しょうかんし? 何を……一体?

サクノシン
…………!

サクノシン
……そうか、わかったぞ!! さては貴様ら、ゲンバどもの手下だな!!

サクノシン
姫様をどうする気だ!?

ティリス
え!? “貴様ら”って私たちのこと!?

ティリス
それにゲンバって……?

スズネ
な、何を言ってるの、サクノシン!?

サクノシン
騙されてはいけませんぞ、姫様!

サクノシン
このような珍妙な格好をしている者たちなど

サクノシン
きっと良からぬことを 考えているに違いませぬ!

スズネ
この方々は、そんな人たちではありません! 話を聞きなさい!!

ティリス
そうだよ。 私たち、ゲンバなんて人知らないよ!

サクノシン
クッ……おそらくは、姫様が世間知らずで、人を疑うことを知らぬところにつけ込み、

サクノシン
言葉巧みに騙したのであろう!!

セリア
………今、なにげに自分の主に対して、 ヒドイこと言ったわね、コイツ。

サクノシン
ええい、問答無用!!

ティリス
キャッ……危ない!!

セリア
こっちに攻撃してくるんじゃ仕方ないわね。

セリア
ちょっと痛い目をみさせようと思うんだけど構わない?

スズネ
………仕方がありません。

サクノシン
何をたわ言を!!

セリア
行くわよ!!

サクノシン
グハァ……!!

サクノシン
な、なんて強さだ……。

サクノシン
こんな……

サクノシン
こんな……臍部丸出しの破廉恥な格好をした おなごがこれほど強いとは……!

セリア
は、破廉恥って……! アンタ、まだ殴られ足りないの!?

サクノシン
グヘッ……!!

スズネ
サクノシン、 いい加減、私の話を聞きなさい!!

サクノシン
ひ、姫様……!?

サクノシン
な、なんと!!

サクノシン
それでは拙者は、姫様の命の恩人に向かって 刃を向けていたのか!?

サクノシン
それならそうと、 早くお話しになってくれれば……!!

ティリス
話を聞いてって、 スズネ、ずっと言ってたのに……。

セリア
……ねえ、コイツって、 これまでもずっとこんな感じだったの?

スズネ
え、ええ……。

ティリス
大変だね、スズネも……。

スズネ
悪い者ではないんですが……。

スズネ
いつも、早とちりすぎるというか、 思い込みが激しすぎるというか……。

サクノシン
クッ……こうなったら……

サクノシン
腹を切ってお詫びを!!

ティリス
は、腹……!? 切っちゃうの!?

サクノシン
はい、切ります!!

サクノシン
武士として、 それ以外お詫びのしようがありませぬ!

スズネ
や、やめなさい、サクノシン!

サクノシン
しかし……!

セリア
………確かに、やめたほうがいいわ。

セリア
少なくとも、私たちを狙っている者を なんとかするまではね……!

サクノシン
は……?

スズネ
狙っている者たち……!?

セリア
そこのアンタ、出てきなさい!!

セリア
どうせ、 さっきの仕返しにでも来たんでしょ!?

カゲヌイ
……………。 我が気配に気づくか……。

スズネ
あなたは、確か……!!

カゲヌイ
………スズネ姫、 おとなしく来ていただこう。

カゲヌイ
こちらの言うことに 黙って従って頂けるのであれば、

カゲヌイ
あなたはもちろん、周りの者たちへも 一切手出しはしない。

カゲヌイ
従わぬというのであれば……

カゲヌイ
容赦は……しない!!

スズネ
ゲンバの……命令ですか……?

カゲヌイ
…………。

スズネ
分かりました……従いましょう。

スズネ
その代わり、先程の周りの人たちに 手を出さないという約束は……。

カゲヌイ
……守ろう。

サクノシン
いけません、姫!!

スズネ
いいのです、サクノシン。

スズネ
これ以上、あなたや関係のない方々に 迷惑をかけるわけにはいきません……。

ティリス
関係なくないよ!!

スズネ
え……?

ティリス
関係なくなんて、ない!!

ティリス
まだ事情はよく知らないけど、

ティリス
スズネが無理やり連れて行かれようと しているってのは分かるよ!

ティリス
なら、そんなの見過ごせるわけないよ!

スズネ
ティリス様……。

セリア
そうね。あなたが私たちの身を守るために、 この男に付いていこうと言うのなら、

セリア
確かに、関係なくないわ。

スズネ
それは……。

スズネ
しかし、この男は ゲンバに仕えている朧流忍軍の頭目……。

スズネ
先程あなた方と 戦った者たちなどとは格が違います。

スズネ
お気持ちはうれしいですが、ここは 私が黙って従うことが最善なのです……。

カゲヌイ
…………。

セリア
私たちがこの男より弱いと 思われているなんて、見くびられたものね。

セリア
Shou-chanもそう思うでしょ?

セリア
フフッ…… どうやら考えてることは同じようね。

スズネ
まさか……戦う気ですか?

スズネ
やめてください!!

ティリス
Shou-chan、セリア! あいつを懲らしめてあげて!

セリア
分かってる!

セリア
行くわよ、Shou-chan!

カゲヌイ
……愚かな。