グッ……！ これほどの手練とは……！！

ならば…… ここはひとまず、退かせてもらう……。

逃げる気！？

待ってください！

ゲンバはどうして 謀反など起こしたのですか！？

知っていることを、教えて下さい！

……知りたければ、 ゲンバ様に直接聞くことだ。

ケホッ……ケホッ…… 何これ、煙……？

逃走用にこんなものまで用意しているとは、 なかなか油断ならないわね。

先程手合わせして頂いた時から、 只者ではないと思っておりましたが

まさかゲンバ直属のシノビを 退けるとは……。

さすがですね、セリア師匠！！

し、師匠！？

はい！

拙者、今のセリア師匠の戦いを見ていて その強さにあらためて感服いたしました！

ぜひ、弟子にして頂ければと！

で、弟子！？

い、いや、たしかに私は アンタなんかよりずっと強いけど、

私自身、修行中というか、 修行を仮で終えたばかりだし……。

弟子なんか取る気は……。

そこをなんとかお願いします！！

…………。 さすがにこんなパターンは初めてだわ……。

いいんじゃない。弟子にしちゃえば。

そんな気安く言わないでよ！

うーん、そうだね……。

だったら、“この世界にいる間だけ”って、 条件を付けるとか。

うーん、それだったら、まあ……。

おお、弟子にして下さいますか！！ ありがとうござます！！

早く兄弟子のShou-chan殿や ティリス殿に追いつけるよう、

拙者、がんばります！！

……私たち、セリアの弟子になっちゃったよ

勘弁して……。

そうだ、姫様！

セリア師匠たちに、我々へのご助力を お願いしてはどうでしょうか？

きっと力強い味方になってくれますぞ！

え……！ しかし……。

残念ながら、拙者では姫様の身を守るのは、 実力不足……。

もし姫様がゲンバのもとに 向かうつもりなのでしたら、

師匠たちの助力を仰ぐのが一番かと思います

…………。

そうね。 とりあえず、事情を話してくれないかしら？

ここまで関わった以上、 今後、私たちがこの世界を探索する間、

あの黒ずくめの男に狙われることは、 確定でしょうからね。

うん、それに「ゲンバ」って誰なの？

さっきから会話の中で 頻繁に出てきているけど……。

人の名前……？

…………。

そうですね………。 分かりました……。

この国のこと、 そして私たちのことをお話ししましょう。

ゲンバというのは、 今この国を支配している者の名前……。

そして……私の元家臣になります。

元家臣……？

はい……。

すでにお察しになっているかもしれませんが 私はこの国を治めていた者……

つまりは領主でした。

と言っても、つい１年ほど前に、 亡き父の跡を継いだだけで、

民のために何かできたわけでは ありませんでしたが……。

何を仰いますか！！

姫様が民のために、日々心を砕き、 政策を考えておられたことは、

このサクノシンをはじめ、 心ある家臣の者たちは、皆知っております！

…………。

で、現在はそのゲンバってやつがこの国を 支配しているってことは、

そいつが、反乱でも起こしたの？

………はい。 その通りになります……。

ゲンバの奴は、卑怯にも姫様が所用で 辺境地域へ赴いていた隙を狙い、城を占領。

そのまま、要衝を抑えてこの国を支配下に 収めてしまったのです！

お恥ずかしい話です……。

すぐにでも城に戻ろうとしましたが、

ゲンバの手の者の監視の目が厳しいため、 なかなか城に近づくことは難しく

なんとか碧陽の竹道に辿り着いたのですが、 そこで襲われてしまい……

私たちに助けられたってわけね。

はい……。

私は自分が至らない主君であることは 重々承知しています。

ゲンバが民を苦しめているならば もちろん許すわけにはいきませんが、

逆に、もしゲンバが治めることで、 この国の民が幸せになるのであれば、

それはそれでいいのです……。

ただ、やはり私は、ゲンバの口から、 なぜ謀反を起こしたのか……

そして私のどこが至らなかったのか

それらを聞きたいのです……。

もし捕まってしまったら、

ゲンバと対等な立場で それを聞くことが叶わなくなると思い、

恥ずかしながら、 逃げ回りつつ、城に向かっていた次第です。

スズネ………。

…………。

ねえ、セリア。 お願いが……

いいわよ。

え……？

どうせ、あんたのことだから、 スズネを助けたいっていうんでしょ？

う、うん、そうだけど……。

だから、いいわよ。

え……でも、封神儀のことは……。

分かってる。 私だって忘れているわけじゃないわ。

でも、スズネたちを見捨ててはいけない、 という思いは、私も同じだから。

セリア……

大好き……！！

コ、コラ！ この程度のことで、抱きつかないでよ！

Shou-chan、アンタの意見は……

まあ聞くまでもないわね。

本当によろしいのですか……？

もちろん、 ご助力頂けるのは有り難いのですが、

あなた方には、あなた方の使命が あるのではないかと……。

確かにね……。

さっきも言ったけど、私たち自身の目的を 疎かにする気はないわ。

だから、取り引きしましょ。

取り引き……？

そう、取り引き。

あなたが、そのゲンバってやつを 打倒するなり、和解するなりした暁には、

国を挙げて、 私たちの封神儀探しに協力する……。

そういうのは、どうかしら？

私としては、普通に封神儀を探すより、

もしかしたら、そっちの方が早く見つかる んじゃないかとも思っているんだけど。

…………。

分かりました。

必ずや……と、お約束できる立場では 現状ありませんが、

私にできることであれば、あなた方の ご厚意に報いることを、お約束します。

決まりだね！！

とりあえず、 どこを目指せばいいの？

ゲンバをおそらく 居城の中の千畳御殿に居るはずです。

ですので、まずは城を目指して進みましょう！

わかった！ それじゃあ、しゅっぱーつ！

おおーーっ！！

フフ……。

Shou-chan、何か言いたそうね。

……分かってるわよ。

スズネに“取り引き”を持ちかけたの、 私っぽくなかったって言いたんでしょ。

ま、確かにね。

これまで、ああいうのはパリスの 役回りだったのかもね。

でもまあ、ああでも言わないとスズネは、 私たちの協力を断りかねなかったから。

……なによ、その顔は！

あー、もう！ さっさと行きなさい！

アンタみたいなノロマ、グズグズしていたら ティリスたちに置いて行かれるわよ！

確かに昔の私…… ティリスたちと旅をする前の私だったら、

あんな“取り引き”を 持ち出すこともなければ、

そもそも、スズネたちよりも、 任務を優先しちゃってたかもしれないわね。