ミューゼ
応急処置はしたわ。 これで傷が開くことはないはず……。

シリウス
ミューゼ…… ここまで治癒魔法を使いこなせたのか……。

ミューゼ
フフッ、曲がりなりにも私だって皇女よ。 これぐらいは心得ているわ。

ミューゼ
お姉様たちみたいに、強大な魔法を 扱ったことはまだないけどね……。

シリウス
だから、あの場にいたのか……。 傷ついた帝都の民を癒すために。

ミューゼ
……うん。

ミューゼ
それに私…… じっとしていられなかったの。

シリウス
じっとしていられなかった?

ミューゼ
こんな時に不謹慎かもしれないけど、 私、嬉しかったの……。

ミューゼ
幼い頃みたいに、お兄様たちが 一緒に何かをしていることが……。

ミューゼ
私たちは成長するに従って、 いがみ合うようになっちゃったけど、

ミューゼ
バリウラの民を守るために、 こんなにも協力し合えるんだって思ったら、

ミューゼ
私も一緒に頑張らなきゃって……!

シリウス
ミューゼ……。

ミューゼ
でも、やっぱり怒ってるよね……。

シリウス
そんな言葉を聞いた後じゃ、 怒れないさ……。

シリウス
それに、先程はお前の勇気に助けられて しまったからな……。

ミューゼ
シリウスお兄様……。

シリウス
……なんだこの地響きは?

魔獣
グガガガアアァァーー!!

ミューゼ
キャア!!

シリウス
クッ…… 神軍で使役されている魔獣か……!?

シリウス
ミューゼ、お前は逃げろ! あの魔獣は私が相手する!

ミューゼ
そんな……傷がまだ……。

シリウス
大丈夫……お前のおかげで 傷は十分に癒えた。

シリウス
それに、これでも第一皇子だ。 あの程度の魔獣、簡単に撃退してみせるさ。

ミューゼ
でも…………。

シリウス
心配するな……。 お前のことは必ず守ってやる。

ミューゼ
お兄様……。

シリウス
さあ、早く行け!

魔獣
グオアゴアオオオオーー!!

シリウス
魔獣よ、こちらに来い! 私が相手になってやる!