ファダル
ここだな。 魔神ラグルヴォードがいるという場所は。

クルト
そうみたいだね。

クルト
ここからでも強力な気配を感じるよ……。

クレア
…………。

クルト
どうしたんだい? 姉さん。

クレア
……いえ、何でもないわ。

ファダル
クェイドのことが 気になるのか?

クレア
気にならない…といえば、 嘘になってしまうんでしょうね……。

クレア
でも、大丈夫。 彼女に託してきたから……。

ファダル
…………。

クルト
姉さん……。

クレア
2人ともどうしたの!?

クレア
そんなしまらない顔をしてたら、 急に魔神に襲われても対応できないわよ!

ファダル
ああ、そうだな。

クルト
…………。

ファダル
では、俺は周囲の偵察をしてくる。 2人はここで待機していてくれ。

クレア
いや、今回は私が行くわ。

クレア
いつもファダルにばかり、斥候の役を やらせては申し訳ないからね。

ファダル
ああ、それじゃあお願いするとしよう。

クレア
任せて。

クレア
クルト、ワガママを言って ファダルを困らせないでね。

クルト
……大丈夫だよ。

クレア
フフッ、それじゃあ行ってくるわね。

クルト
…………。

ファダル
どうした、クルト?

クルト
うるさい!

クルト
ボクがどうしたって ファダルには関係無いだろう!

ファダル
…………。

ファダル
ああ、そうだな……。

ファダル
……このまま待っていても仕方がないし 1つ話を聞いてくれないか?

クルト
別にボクは聞きたくない。

ファダル
そう言うな。

ファダル
お前は1年前の魔獣グレゴグ討伐任務を 覚えているか?

クルト
…………。

クルト
ああ…覚えているよ。

クルト
あいつの秘密を知らないまま挑んだせいで みんな散り散りになってしまった。

クルト
まあ、ボクはすぐに姉さんを探したけどね。

ファダル
そうだ。

ファダル
俺たちはあの時、分散した戦力を戻すため それぞれが合流を目指した。

ファダル
クェイドを除いてな。

クルト
今、思い出しても腹が立つよ。

クルト
あいつは、1人でグレゴグに挑んだんだ。

クルト
自分の力に自信があったんだろうね。 グレゴグを1人でも倒せるほどのさ!

ファダル
……いや、そうじゃない。 あいつは俺たちを傷つけたくなかったんだ。

クルト
同じことだ!

ファダル
それと同時に俺たちを信じてもいた。

クルト
わけがわからないよ!

クルト
いつもそうだ!

クルト
ボクにはあいつが何を考えてるのかが さっぱりわからないんだよ!

ファダル
……そうだな。 あいつは面倒なヤツだからな。

ファダル
あの時、あいつがまず恐れたのは 俺たちの各個撃破だ。

ファダル
クェイドはバラバラになった俺たちが 順番に襲われることを恐れたんだ。

ファダル
だからあいつは自分自身で グレゴグを引き受けた。

ファダル
いずれ俺たちが 助けに来てくれることを信じて。

クルト
…………。

ファダル
あいつはそういう男なんだよ。

ファダル
自分の行為を説明せず 勝手に振る舞っているように見えるが

ファダル
いつも仲間のことを考えている。

ファダル
メイリスはそれまで旅を続けてきた クェイドが長居している場所だ。

ファダル
あいつはメイリスという居場所が 嫌いではないんだろうな。

クルト
フン……。

ファダル
まあ、その行動は人の気持ちを考えず

ファダル
自分の中だけで決着をつけた 迷惑なものも多いがな。

クルト
…………。

クルト
知っているさ……。 あいつが悪いヤツじゃないことくらい。

クルト
でも、だからこそボクは……。

ファダル
ああ、そうだな。 敵は強い方が厄介だからな。

クルト
そんなんじゃない!

クルト
ボクだってアイツのことは認めてる! だけど…それでも……。

ファダル
悪かったな。 俺がどうこう言うことじゃなかった。

ファダル
だが、一応言っておくと、

ファダル
クェイドはお前のこと 結構、気に入ってるぞ。

クルト
フン、そんなことに興味はない……。

ファダル
フフッ、そうだったな。

???
クルト、ファダル!

クルト
姉さん!

クレア
ラグルヴォードのヤツ、

クレア
すでに私たちの行動に気付いて こっちに向かってきているわ!

ファダル
なんだって!?

ファダル
クソッ、やっぱりすべてが罠だったのか?

クルト
どうするつもりだ?

ファダル
まずは場所を移動しよう。 少しでも戦いやすい場所に移動するんだ!

ラグルヴォード
グォォォオオォオーーー!!

ファダル
クッ…なんて威圧感だ。

ファダル
カルナ・マスタ様が討伐を 命じられただけはある。

クレア
ファダル、まさかこのまま逃げるという 選択をするつもりはないわよね?

ファダル
ああ、仕方がない。

ファダル
クェイドとの約束を破る形になってしまうが

ファダル
ヘタに逃げて不利な状況になるよりは 準備ができている今の方がまだマシだろう。

クルト
大丈夫だよ、姉さん!

クルト
アイツがいなくても ボクたちは負けやしない!

クルト
それに姉さんはボクが必ず守る!

クレア
フフッ、頼りにしてるわ。

クレア
でも、気負い過ぎないでね。

クレア
私は大事な弟がやられるところなんて 見たくはないんだから。

クルト
……大丈夫。 大丈夫さ。

ファダル
2人とも倒すことではなく やられないことに注力しろ。

ファダル
現状で援軍は期待できない。

ファダル
この戦力を維持したまま、 ヤツの力を削るんだ!

ファダル
この戦い勝つぞ!

クレア・クルト
ええ! おう!