ミセル
クッ…!

ゼルバーン
ムッ……娘、思ったよりやるな。

ミセル
“娘”じゃないわ。 ミセルよ。

ゼルバーン
そうか……。 我が名はゼルバーン。

ゼルバーン
ヴェーダ剣術の……

ミセル
知ってるわ。

ミセル
ヴェーダ剣術創始者の 名前を受け継いでいるんでしょ。

ゼルバーン
ほう、我が名の由来を 知っているとはな……。

ミセル
以前にちょっとそういうのが好きな人と 話す機会があっただけ。

ミセル
私は興味無いわ。

グルルルル……。

ミセル
な、何?

ゼルバーン
ドラゴンか?

ゼルバーン
だが、体が小さいな。 先ほどのドラゴンの子供か?

子ドラゴン
グググッ……。

バサッバサッバサッ

ゼルバーン
…………。

ミセル
…………。 逃げて行くわよ。

ミセル
私は別に構わないけど、 アンタは村人に頼まれたクチでしょ。

ミセル
追わなくていいの?

ゼルバーン
あの大きさでは、 まだ人々に害を為すことはないだろう。

ゼルバーン
討伐することもあるまい。

ミセル
将来的には、 人々を襲う可能性だってあると思うけど。

ゼルバーン
可能性か……。

ゼルバーン
…………。 俺は先日、1人の若者に剣を教えた。

ゼルバーン
見込みのあるヤツだが、 精神的な弱さがまだあってな。

ゼルバーン
今後、あいつが ただの“才能がある男”で終わるか、

ゼルバーン
それとも、後世にまで名を残す 大英雄になるのかは俺にもわからん。

ゼルバーン
可能性とはそういうものだ。 勝手に断じていいものではない。

ゼルバーン
将来、あのドラゴンが人に害を為す可能性は 確かにあるだろう。

ゼルバーン
だが、そうではない可能性もある。

ゼルバーン
もし、あのドラゴンが 人に害を為す存在になるなら、

ゼルバーン
その時、俺が討伐すればいいだけのことだ。

ミセル
……………。

ミセル
アンタ…堅苦しそうな格好しているけど、 意外と面白いことを言うのね。

ミセル
気に入ったわ! 私の仲間になりなさい!!